新人家事手伝いお手製の晩御飯を食べ終えて口元に緩やかな三日月型を作る彼は、(ほう)ける恋幸を一瞥(いちべつ)した後、いつも通りに空いた皿をキッチンの流しへ運び、これまたいつも通り服の袖を(めく)って洗い物を始めてしまう。

 ここで言う“いつも”とは『星川が休みで二人きりの日』を指すのだが、先ほどの発言など忘れてしまったかのように自然体な裕一郎の背中を見て、恋幸はひたすら頭の上に疑問符を浮かべていた。


(どういう事……?)


 もしかすると、彼の発言に深い意味は含まれておらず、『続き』と聞いて勝手に曲解してしまったのかもしれない。

 そんな考えが頭に浮かぶと同時に、恋幸は“何か”を期待している自分自身に気づいてしまい、「なんてはしたないのだろうか」と熱くなる頬に両手を添える。