夜の8時半を過ぎた頃、カラカラと玄関の扉が開き心地よい低音が言葉を紡ぎ落とす。


「ただいま」
「裕一郎様、おかえりなさいませ」
「おっ、お仕事お疲れさまです!!」


 星川の横に並び頬を赤くして出迎える恋幸を見て、裕一郎にしては珍しくあからさまに驚いた表情を浮かべた。

 そんな彼の様子に、星川にも『驚き』が伝染する。
 裕一郎が自分以外の“女性”に対してここまではっきりと感情を表すのは、とても珍しいことであると既知していたからだ。


「……なぜ、小日向さんが?」
「お、お言葉に甘えて……泊まり、に、来ました……すみません……」