低く名前を呼ばれ、キスされるのだろうかと考えた恋幸がぎゅっと目を瞑った――……瞬間。
 小さな笑い声が彼女の鼓膜を揺らし、何か暖かくて柔らかいものが額に触れる。


「……しゃっくり、止まりましたね」
「へ……? あっ、は、はい……」
「良かったですね」


 無表情でそうこぼし体を離す裕一郎を見て初めてからかわれたのだと理解したものの、恋幸は今だに高鳴る鼓動のせいで彼を怒れずにいるのだった。