「……ひどく、顔色が悪かったので。無理やり密室に連れ込んでしまったせいだと、」
「それは……っ! 倉本様と車内に2人きりだって意識しちゃったらドキドキして、緊張していたからです……! 不快になんてなっていませんし、倉本様のせいで不快になるなんてことはこの先も絶対絶対、絶っ対にありえません……!! よく覚えておいてください!!」


 勢いに任せて言い終わると同時に、恋幸は「とんでもない発言をしてしまったのではないだろうか?」という後悔の念に(さいな)まれる。
 しかし、とっさにこの空気を取り(つくろ)えるような気の利いた言葉が脳内に浮かぶわけでもなく、彼女は体を裕一郎の方に向けたまま唇を引き結び、両手で自身のスカートをきゅっと握りしめた。