あ、この子知ってる。

たしか隣のクラスの柚木さんだ。


柚木恵美(ゆずきえみ)ちゃん。

一年の秋頃に、可愛い子がいるという噂が急激に回り始め、実際に見てみると噂以上に可愛かった。


目はくりんとしてて、顔も身長もちっちゃくて、ほんのり色づいたぷるんとした唇。


日に当たると柔らかい栗色に見えるロングヘアーは、絹糸みたいに艶やかで、この間横を通った時なんか、めっちゃいい匂いがした。



相手は誰だろう……。

っていやいやいや!
部外者の私が詮索するのは良くないよね。



でもこんなに可愛い子に告白されるだなんて嬉しいだろうなぁ。

私は邪魔にならないように、ちょっと違う場所にでも行きますか。


足音を立てないようにその場を離れようとした、その時。



「……ごめん」



予想もしなかった声に、動きかけた足が止まってしまった。