…………ん?
今、私、嫌って思った……?
「えぇ?」
口に出た戸惑いの声に、もう一度胸に手を当てて考える。
嫌……? 嫌って何が……?
私が藤のことを知らないことが?
でもそれって当たり前じゃんね?
だって藤は友達だけど、私とは違う人間なわけで。
そんなこと言い始めたら、里帆のことだって私の知らないところなんて沢山あるだろうし。
それに私だって、私しか知らないようなことがあるんだと思うし。
今なんて私でさえわからない自分の感情に振り回されてるっていうのに。
「あぁーーーー! わっっかんない!!!!」
道端でそう叫べば、周りにいる数人がびくりとこちらを振り向くけれど、そんなこと気にもならなかった。
どうせどんなに考えてもこれ以上はわからない!
こんな頭がぐちゃぐちゃする時は、早く帰ってご飯食べてお風呂入って寝るに限る!!
そうと決まれば、即実行。
きっとこのことは、明日以降の私がなんとかしてくれるはず!
ちなみに英語の課題のことはこれっぽっちも頭に残っておらず、思いもよらぬところで明日の私への負担が増えていたのを、この時はまだ知らない。



