私は手を振って歩き出す。

二人にあてられたわけでもないけれど…

「…お見合いでもしようかな…」

ポツリとそう呟いて大きな深呼吸をした。

「ねえ、今の人めちゃくちゃイケメンだったよね?」

「うん、めちゃくちゃイケメンだった。
隣は…奥さんだよね?」

「そうでしょ?お腹大きかったし…奥さんがクシャミしたら、すぐに自分の上着を肩に掛けてあげてて、素敵…。」

あれ、それって…もしや…

通りすがりの声に思わず振り返る。

彼は紗和の頭をポンポンと撫でて笑っていた。

紗和は、なぜか少しむくれた顔をして彼を見上げていた。

そんな紗和の様子を微笑みながら見ている彼…。

紗和が彼の腕から手を離して歩こうとした瞬間…

すかさず紗和の手を引き寄せ、腰の辺りに手を添えて歩き出した。

紗和が少し抵抗した様子だったが、すぐに観念した様に彼のたくましい腕に顔を寄せて歩き出した。

そんな紗和の横顔を安心した表情で見つめながら彼も歩き出した。

まるで、大切な宝物を扱う感じ…。



ふっ…
私はハニカミながら二人を見つめ、また踵を返して歩きだした。
「よし、明日からまた仕事だ。ガンバロ…。」