「何言ってるんだよ…そんなの気にしないの…
体調が悪くなると困るから…早く帰ろう。」
そう言うと、彼はすぐに私をタクシーに乗せた。

「…無理するのだめだよ」
光くんが私の頭に優しく手を乗せる。

「…うん、ごめんなさい…」

「…素直な紗和…可愛いね」

「…もう、恥ずかしいから…言わないで」

「アハハ…」

光くんは、いつも私の事可愛いって言うけど、私…もうすぐ35歳なんだよ。
彼はまだ、25歳…
10歳の年の差…夫婦…。

トシノサ恋…だった…。


ねぇ…光くんは私がもっとおばさんになっても好きでいてくれる?

私…君より先に年をとってしまうけど…
変わらずにいてくれるかな?

そうだといいな…

……………………っっ。

私は、泣きつかれた子どもの様に…
いつの間にか彼の肩に寄り添いながら眠ってしまった。

そんな私の頭や、頬に触れながら愛おしそうな表情をした彼がポツリと囁いていた事を私は知らなかった。

「…他の男を見てるなんて…」

温かくて心地いい…
前もこんな風に…温かくて心地いい事があった気がする…。ふふ…なんだか自然と笑顔になってしまう…。


「…ほんと…こっちは好きで仕方ないのに…
わかってないんだから…」


私が…笑ったら…
あなたに笑顔を見せたら…

おばさんになっても…
おばあさんになっても…

ずっとずっと…
可愛いと、言って…。


光くんが…好き。







「…はぁ…やっぱ俺、病気だな…。
それも…永久に治りそうにない厄介な…。」



そう言って彼が優しく笑って私を見ていたなんて…
私はきっとずっと…知らないんだろうな。