「紗和…お待たせ…あの店のベビーベッド予約してきたよ…」

カフェでお茶をしている紗和の隣の席にゆっくりと座る…。道行く男が紗和を見ているのが気に食わないが、今日の紗和は白いワンピースが眩しいくらいによく似合っていた。
ただ少し不満をいうと、紗和の白くて細い腕が剥き出しになっていること…カーディガンを羽織るのは暑いから嫌だと言われてしまった。

「…えっ、ありがとう…でも、何で?ちょっと高いかなって…諦めようと思ってたのに…」
紗和が申し訳なさそうに俺を見上げた。

「なんで?だって、紗和が使いたい物の方がいいよ…それに、沢山使えば元もとれるよ。」

「えっ…沢山?」
紗和が少し驚いたような表情をする。

「…何かおかしい?」
そう言って笑う俺を見て紗和は、少し膨れてみせる。そんな紗和が可愛くて仕方ない。

「もうっ、光くんは…いつもからかうよね。」
そう言って俺の肩を軽く叩く可愛い紗和…

俺の肩を触れた手をすかさず握りしめながら、彼女の顔を見つめた。

「…バレたか…でも、俺は紗和によく似た女の子も欲しいな…」

「…私は光くんによく似た男の子がいいな」
そう言って可愛い笑顔を見せる。

「じゃああのベビーベッドでいいんじゃない?
俺は…紗和がしたいようにしたい」

「…うん…ありがとう光くん」

「じゃあ…そろそろ行こうか、日向子さん待ってるんじゃない?」

「あ、そうだ…急いだほうがいい?」
紗和が俺の腕時計を見ようとする…
そんなに近付くと…抱きしめたくなるから…。

「…まだ大丈夫だよ」

俺の言葉に、安心したように俺の顔を見上げるのが、本当に可愛すぎ…

彼女の腰に手を添えながら、歩き出す。
紗和は気づいてはないが、俺に話をするときだけ少し甘えた可愛い口調になる…。
「ねえ…光くん、私…さっきね、昔の事を思い出していたんだ…」

「…そうなんだ…どんな?」

「私…はじめは光くんの事…すごいヤンキーかなって…思って…」

「アハハ…ひでーなっ。」

紗和がそう話すのを楽しく聞く一方で、俺は思い出していた。
俺が初めて君と出会った日の事を…
そして、君の名前を知った日の事を…

君が僕を知る前から…
僕は君を見つけていた。

「…光くんが高校でモテないか心配だな…」
急に少し暗い声…

「えっ…何それ…」

「だって…さっきから…皆…すれ違う女の人が…光くん見てるんだもん…」

「見てないよ…」

笑って答えるが、紗和の少し寂しそうな顔が見える。
まったく…本当に…
昔から自分の事を何にもわかってないな…

「ば〜か…」
そう言って、紗和の頭を優しく触れた。

奥平紗和先生…

俺はあなたが、ずっとずっと大好きなんですよ。
他なんて何にも見なかった俺が唯一見たのが…
先生…あなたなんです。


ポンポン…
紗和の頭を優しく撫でながら笑った。

「好きだよ…」

奥平先生。

ずっとずっと…好きです。