「佑香」

と、私と名前を呼ぶ凌さんの愛おしい声はだんだん遠ざかっていく。

ダメ…行かないで。

「りょ、さん!」

震えた声で、凌さんの名前を精一杯呼んだ瞬間、凌さんの声が返ってきた。

「そこか。」

そう言って…。
私の身体はふわっと、凌さんに抱えられた。

「部屋行くぞ。」

「はい、」

申し訳ないと思いつつ、凌さんの胸に顔を埋める。

温かい…。

部屋に着くと、私は優しくベットの上に下ろされた。

凌さんは、もう行ってしまう…?

そばにいて欲しくて、考えるよりも先に、凌さんの服の裾を掴んでしまった。

「行かない…で…くだ、さい。」

「大丈夫。そばに居る。」

暗くて、顔は見えないのに、凌さんが優しい顔をしているのが分かる。