12 (大波乱の幕開け)
[凌side]

佑香の選んでくれた服は、凄く良くて…何より、佑香が選んでくれたという特別感が俺の独占欲というものを駆り立てた。

会計をして、袋に元の服を入れてもらって、佑香の待つ外へ出た時、変な男に絡まれている佑香の姿が目に飛び込んできた。

「おい、手離せ。」

考えるより先に体が動いた俺は、男の手首を強く掴む。

「っ!!」

顔をしかめて手を離した男は、俺の顔を見て青ざめて、フラフラしながら走っていった。

「佑香っ、」

男の姿を見て、佑香のことを確認しようと思った俺は、振り向こうとして、佑香に服の背中を掴まれた。

掴むというか…触れるぐらい、弱々しい力のような…

そこで、振り向くことを思いとどまる。

「……ごめんなさい…怖かったです…凌さんは…」

「…うん…?」

「凌さんに触れられると……安心するのに、…あの男の人は、怖くて……」

「…うん…」

佑香は、こんなに可愛いのに、今までこんなことはなかったのか…??