真樹には真樹の、岡原には岡原の五年間があったように、みんなにもそれぞれ違う五年という月日が流れていたはずである。

 同じ高校に進学していても、中退するか卒業するかという違いがでてくるし、卒業後の進路だってバラバラのはず。
 真樹や美雪のように社会に出た子、大学や短大に進んだ子、専門学校に進んで自分の夢を追いかけている子……。

(でも、みんないい表情(かお)してる)

 真樹はそう思った。少なくとも、この中に人生を悲観している人はいない、と。
 きっとみんな、自らが納得のいく道を選んでいるのだろう。たとえ苦労したり悩んだりしても、後々(のちのち)その苦労や悩みさえ「いい経験になった」と思えるような――。

『――えーっと、ちなみに僕の近況ですが。今は大学で経営学を学んでます。卒業したら自分で会社を起業しようと思ってます。彼女は……いません! 以上です!』

 田渕くんは、挨拶をそう締めくくった。
 同級生達の反応はというと、「起業する」という言葉には「おおーっ」「わぁーっ」とどよめき、「彼女はいない」と暴露(ばくろ)したところでは一同大爆笑になっていた。

 中学の頃は知らなかった。彼にこんな大きな夢(というか野望?)があったなんて!
 みんなと一緒に驚いていた真樹だったけれど、別の部分でポカンとしていた。

(「彼女いない」とか、その情報いるんだろうか……)

 というか、それを聞いた女子はどうリアクションすればいいんだろうか? それとも、今ここに彼が想いを寄せていた女子がいて、「自分は今フリーだぜ!」とアピールしたいのだろうか?

(いや、いくらそれアピールしたところで、相手にその気がなかったらイミないと思うけど……)

 それはそれで、スベったようになってちょっとみっともないかもしれない。

『――じゃあ、ここからは近況報告会にしまーす! 一組から順番に、一人ずつステージに上がってきて下さーい!』