あなたは運命の人

熱のせいで立つのもやっとで、必死に気を保つ。

チンと軽い音が聞こえると目の前の扉が開いた。

空のエレベーター。
先に乗り込んだ桐人君の五十センチ横に立った。


「俺って君から見たら、頼りない?」

エレベーターが下へと動き出すと桐人君が言った。

「そ、そんなわけはないです!」

私は慌てて首を横にブンブン振った。

社会人で仕事終わりの疲れ切った桐人君に迎えに来させる自分が情けないだけ。

否定したのに目の前の桐人君の顔が曇っていく。


「……泣くほど俺が嫌なの?」

どうやら私は泣いているようだ。
更に申し訳なくなる。


「嫌なわけありません……。嫌になっているのは自分にです……」

情けない自分に嫌になる。

目を擦りながら私はエレベーターの床を見つめていた。


「君は俺がおばさんのためだけに君と一緒に住んでいると思っているのか?」

脈絡も無く、桐人君が言った。