あなたは運命の人

『……とりあえず居場所を教えて』

私の言葉を流して、再び居場所を訊かれたが、風邪を移すわけにはいかない私は黙り込む。


『美優が心配なんだ……。だから教えて』

桐人君にそう言われたら、胸がきゅんとしてしまった。

気怠い身体。
心細い一人のホテル。


「……駅前のビジネスホテルです。部屋番号は……」


頼りたくなってしまった私は素直に白状した。


『家に帰るか、そこに俺も泊まるか、どっちが良い?』

私は辺りに目を向ける。

此所にはシングルベッドが一つのみ。
それにこのホテルは物凄く狭い。
トイレかお風呂に入らない限り、お互いの姿が絶対に見える。

「一人で帰ります……」

やむなく帰る選択をした。

『今すぐ行くから帰る準備をして。部屋で待ってて』

帰ると言ったのに無視するように有無を言わさない低い声が届いてきて私は肩をビクッと跳ねさせた。

「わ、分かりました……」

断りたかったが、了承して返した。
これ以上桐人君を苛立たせたくないから。

私の返事を聞くと桐人君は「すぐに行く」と言って電話を切った。

着ていた服は汗だくだったが、着替える気力もなくて、ベッドに再び倒れ込むとそのまま桐人君を待った。