あなたは運命の人

そうだ、ホテルに来たんだ。
どうやらあの後私は眠っていた。
明るかった部屋が真っ暗になっているから、相当な時間が経っているとは思う。

ブブブブブ……

振動音に携帯が鳴っていたことを思い出し、ベッドに転がっている携帯に手を伸ばすと慌てて取った。

「もしもし」

熱のせいで掠れた声が出た。

『やっと出た……』

耳に聞こえたのは安心したように吐かれた息と声。

相手は桐人君だった。

「え、どして『今すぐそこに行くから何処に居るのか教えて』

どうして電話を?と訊ねる前にまさかの言葉が被さってきた。
携帯を持ったまま私は固まる。

だって私、数日帰らないとメールした。

『聞いてる?』

数秒後、耳には先程とは違い、苛立ちを含んだような声が耳に届く。

「えっと、だいじょ『君は不整脈と喘息を持っていて、そのホテルで一人で倒れたらどうする?最悪の事態になったら俺の立場はどうなる?だから何処のホテルかって訊いてる』

戸惑いながらも断ろうとしたが、早口で捲し立てられて遮られた。