あなたは運命の人

「分かりました……話とは？」

気まずいが無視するわけにはいかない。
私はおずおずとしながらも彼の顔を窺う。

「貴女のお母様は各務との交際のことを知っている？知っていないよね？」

ピリッとした空気を纏ったまま桐人君が言う。

「い、いえ！」

私はビクビクしながらも首を横に振って否定する。
知っているも何も、諒ちゃんとは交際なんてしたことがない。

「同棲二日目に違う男を家に入れる女いると思う？貴女のお母様にこの結婚を疑われてしまう可能性もあるし、それに此所は俺の家でもあるんだけど」

その通りだと思った。
桐人君の家でもあるし、桐人君は私のお母さんのために手伝ってくれているし、いつも桐人君の一人称は『僕』なのに、今『俺』だった。


「アイツを此所に二度と入れないで」

今まで聞いたことのない苛立ったような低い声で、私は肩をビクつかせてしまった。

相当怒らせてしまった。


「勝手なことをしてごめんなさい！」

私は青ざめながら勢いよく頭を下げた。

申し訳なさすぎて涙が込み上げる。
泣いたら卑怯だ。