「もう二人共、今から結婚しちゃいなさいよ!」

ドキドキマックスのそこにとてつもなく余計なことを思い付くお母さん。
その言葉に自分が惚けていたことに気付き、首を振って自分を正気に戻した。

「いやいや、無理だよ。もう夜だし」

一先ず言い逃れ出来る話だったので助かった。

「美優知らないの?今は便利な時代なのよー?ネットで出せちゃうんだから!中山さん、出してきてー!」

中山さんは長年萩原家に仕えている執事さん。
六十一歳、白髪混じりだが、私よりも動けるし、頭も働く有能な男の人だ。
中山さんは「畏まりました奥様」と言うと部屋から出て行った。

どうしよう。

桐人君は婚約者のフリをするだけなのに、結婚まで進んでしまっている。

「あっ!あのチャペルも予約しなきゃ!」

次から次へと何を言うんだこの人は。

「えっ!?ちょっとお母さん!」

ぐんぐん突き進む母に私も流石に焦り出した。