「おばさんに合わせないと」

耳元に囁かれた言葉にハッとして、自分の目的を思い出す。

そうだ。
私は桐人君の婚約者を演じるんだ。

少し冷静になったところで、桐人君が私からゆっくりと離れた。

そこに見えた彼の優しすぎる顔に鼓動は駆け足に。


「これから美優さんと二人で居られるなんて嬉しいよ」

演技の言葉と顔に勝手に酔いしれてしまう。

「ねぇ桐人君、二人の時も美優さんなんて呼んでるの?」

そこにお母さんが唐突に言った。

「タイミングが掴めなくて」

眉を下げる桐人君。

「歳下なんだから美優で良いわよ」

お母さんが勝手にそう言うと、桐人君はこちらを見た。

「今から、美優って呼んでも良い?」

桐人君が首を少し傾げておねだりのポーズ。
言葉が出せなくて、私は首を縦に何度も振る。

ドキドキして不整脈が発動しそうです。
いや、心臓破裂しそうです!