あなたは運命の人

こんな配置にしたのは彼女の父がこの会社の常務だから。

だが仕事だ。
そんなことは言っていられない。


「無理を言っているのは充分分かっています。お願いします!」

「何を言われても無理なものは無理だ」


何度目かの会話を交わし、次の目的地に向かっている途中だった。

「桐人、港区の責任者は対応出来ないみたい」

次の目的地を変える電話が入ってきた。
足を止めて手元のリストを見ながら考える。

「じゃあその下にしよう」

「了解。電話する」

「お願い」


アポが取れるとタクシーを拾うために大通りへと向かおうとした。
ふと目を向けた反対側の歩道に人だかりが見えた。

「何かしら」

青柳も気付いたが今は仕事だ。
「急ごう」と言って視界から外そうとした時だった。

視界の隅、見覚えのある朝見たスーツが地面に蹲っていた。

仕事がある。

だけど、