あなたは運命の人

二人は付き合っているんだ。
あんなじゃれ合いもするし、彼女の手料理も食べてきた。

現実を受け入れろ、俺。
それに各務はすぐに帰る。

リビングに行くと美優に手伝うと申し出るが、座って下さいと背中を押されてしまったので仕方なくダイニングチェアに腰を下ろした。
すると突然麦茶が大丈夫かとあわあわした様子で気にし始める美優。
大丈夫だと返すと今度は今晩のメニューのヒレカツの心配をした。

「好き嫌いは少ない方だと思うし、基本出された物は食べるから気にしないで」

俺の返答に美優は胸を撫で下ろしたのか、強張った表情が崩れてくれて安心した。

「俺のリクエストなんだよね」

俺の前に箸を置きながら各務に笑顔で威嚇されて苛立った。

「君は帰らないの?」

「俺のためにヒレカツ作ってくれたんだから食べて帰るに決まってるよね?」

苛々が治らない。

「とりあえず私はまだ揚げ終わっていないので続きやります。諒ちゃんは手伝って!」

「あー、ハイハイ」

俺が手伝うと言ったら断られた。
きっと俺が仕事帰りだし、彼氏の方が甘えやすいのだろう。

美優の気遣いが胸に痛みを伴わせた。

まさか初日にアイツをこのマンションに入れるとは思ってもいなかった。