あなたは運命の人

その日の夜、仕事から帰り、玄関を開けたら何か話し声らしきものが奥から聞こえた。
テレビでも観ているのかと思ったら、下には男物の靴。

苛々しながら廊下を進む。
扉の向こうから揚げ物の香りがする。
どうやら夕食を作っている。
漏れる声がクリアに聞こえてきた。

「ダメだよ!桐人君が帰ってからーーーーあぁっ!」

美優が声を張り上げた。

「前より美味いじゃん」

前より美味い?
つまみ食いをしたようだが、気になったのはそこじゃない。

「ダメって言ったのに!」

戯れ合う二人を見るのが限界で扉を開けた。

「何やってる」

「うわぁ!おかえりなさいっ!」

目を大きくして身を竦めた美優。

「おかえり〜桐人君」

笑顔で挨拶をした各務に苛々が増して、「着替えてくるよ」と言ってリビングから出た。