あなたは運命の人

美優の言葉からおそらく母親から急かされたのだと察した俺は踵を返そうとした美優の左の手首を掴むと投げかけた。


「君は自我が芽生える前から僕の婚約者にさせられた。最近焦るような急かしているような違和感を感じなかった?」

俺の言葉に美優は眉を少し寄せた。

「だ、誰が急かして……」

「君のお母様だ」

そう言うと美優の顔は陰っていく。

「ど、どうしてですか……?」

伝えようと思っていた言葉。
目の前の不安な顔の美優に言葉に詰まる。

だってこの言葉を伝えたら、君がどう反応するか分かっているから。

「……君のお母様は、先が短いんだ」

なんとか口を動かして真実を告げると、美優からはサァーと血の気が引いていった。

すぐにあまりのショックでふらっとよろめいた美優の身体を咄嗟に腕を伸ばして支えた。
ふいに触れた小さな身体に勝手に全身が熱くなったが、今はそれどころではないと言い聞かせ自分を叱咤した。