七星ちゃんのファンなのは、嘘じゃないけど。


「えっと、ファンだなんて……あ、ありがとうございます。澄野くん」

七星ちゃんの頬に、ピンク色の花が咲く。


今はバイト中だから、ココアブラウンの髪は後ろにひとつに束ねられている。


ギンガムチェックの制服も、まるで彼女のために作られたのかと思ってしまうほど、よく似合っている。


「それで? 真宙くん、ケーキどれにする?」


「あ、えっと……」


笹木さんに問われて、ハッと我に返る俺。


俺いま、七星ちゃんのことで頭がいっぱいになっていた。

誕生日ケーキを買うという目的が、頭から完全に抜けていた。


「それじゃあ、この苺のケーキください。サイズは5号で」


俺はノーマルな、苺と生クリームのホールケーキを選ぶ。


「ロウソクは何本? あと、誕生日のプレートはどうする? メッセージ何か入れる?」


「ロウソクは10本で。チョコプレートのメッセージは……『Happy Birthday なさちゃん』で、お願いします」