「ねぇ、七星ちゃん。ちょっとあそこのベンチに座ろうか」


" 恋人のフリ " として手を繋いでしばらくふたりで歩いていると、真宙くんが近くにある公園のベンチを指さす。


「うん」


真宙くんとふたり並んで、木製のベンチに腰掛ける。


時刻は18時前だからか、ふと見上げた空はオレンジ色に染まり始めていて


公園もあたしたち以外、他に人はいない。


いつの間にか、後ろをついてきていた森山さんの姿も消えている。


本当に今、真宙くんとふたりきりだ。



さっきからずっと、あたしたちは手を繋いだままで……って!


「だっ、だめだよ真宙くん! あたしとこんなに長い間、手なんか繋いでちゃ……」


森山さんが見ていた手前とは言え、真宙くんには雪乃ちゃんという彼女がいるんだから。


あたしは慌てて、真宙くんと繋いでいる手を離した。