「……新川さん! また、あのお客様が来てたのね……。ごめんなさいね、私すぐに気づけなくて」


再び店の奥から出てきた笹木さんが、あたしに声をかけてくれるのとほぼ同時に、あたしを後ろから抱きしめていた真宙くんの手がさっと離れた。


そうだ。ここは、バイト先だったんだ。


「って、あら真宙くん。いらっしゃい。今日は、来てくれてありがとうね」


「こっ、こんにちは笹木さん」


真宙くんの頬が、どことなく赤い。


笹木さんの言葉に遮られてしまったけど……真宙くん、『俺は七星ちゃんのことが……』って、一体何を言おうとしていたんだろう。