「スミくんーっ!」


真宙くんと中条さんが、ケーキ屋さんに来たあの日から、数日後。


学校の休み時間。

窓際で一之瀬くんと話している真宙くんのもとに、中条さんがやって来た。


「スミくんこれ、どうもありがとう」


どうやら、借りていた古典の教科書を真宙くんに返しにきたらしい。


彼女を見ていてあたしは、忘れ物が多い人……という印象をもった。

でも、もしかしてわざとなのでは? と思ってしまう。


なぜなら、中条さんはここ最近、前にも増して真宙くんに教科書を借りに来ているから。

週に数回は、必ず。


おとといだって、生物の教科書を真宙くんに貸してもらっていた。



「うわっ! ちょっ……中条! 人の教科書に、落書きすんなっての! 何だよ、このハートマークは」


真宙くんが教科書を見て、目を丸くする。


どうやら中条さんに、教科書の裏表紙にハートマークを書かれたみたい。


「いや〜、そのハートを見る度に、スミくんがわたしのことを思い出してくれたら良いなぁ……なーんて」


え!?


「はぁ? つーか、中条も小学生じゃないんだから落書きなんて……」


「あはは、ごめんね? お詫びにこれあげるから、許して?」