僕はバスとかの
公共機関の乗り物に
乗ったことはあるけど、
誰かの車に乗るのは
初めてだ。

ましてや、こんな高そうな車…
彼に運転まで、して貰って…
座席もなんかフワフワしてるし。

「こんな汚れた足で乗っていいの?」
「大丈夫だ、気にするな。
後で洗えばいい。
俺の部屋で、風呂でも入りな。」

僕は黙って頷いた。
それしかできなかった。

そんな夢のような状況が
あっていいんだろうか?

憧れてた彼の家に
いきなり居候。なんて。
許されていいのか?と
自問自答していた。

せめて、迷惑かけないようにしよう。
嫌われたくないし。

「ありがとう…。」
「かしこまらなくて、いいって。」

イルミネーションは消え
白んできた空が見えてきて
車がしばらく走ると
とある高層マンションの
地下駐車場と思われる所に止まった。
専用カードみたいなのを使っているみたいで
セキュリティが厳しそうだ。

駐車場に止まってる車も高級車が並んでいる。

「こっちだ。」

赤い絨毯とシャンデリア装飾の
豪華なラウンジと
エレベーターホールを抜け
高速エレベーターに乗る。
ここでもカードがいるらしい。
四重にも五重にも。
ここには、それだけのお金持ちが住んでいるという、ことなのだろう。
カードをタッチすると
すんなりドアが開く。

乗ると耳がキーンとする。
軽いジェットコースター気分。

エレベーターが止まり
ドアが開いた。

ここは…最上階?
目の前には街が一望できる
大きな窓ガラスに覆われている。
ホテルのスイートルーム?のような
(僕は行ったことないけど)
エレベーター直結の部屋って。

「ここが俺の部屋。」
「凄すぎます…。」

(確かにSNSではチラ見紹介されてたけどさ…)
実際に見たら圧倒される。
目の前にあるのが本物なのだから。
彼自身も。