そうして小一時間。
お店も落ち着いたらしく
片付けも終わり
疲れた僕は壁際の
パイプ椅子に腰かけていた。
「お疲れ様。」
黒服のバーテンダーが
ホットミルクを一杯、
手渡してくれた。
「ありがとうございます。」
「ワタシはもう帰るから、戸締まりだけ気をつけて。まぁ彼がいるから、大丈夫とは思うけど。」
部屋の向こうにいる彼…都会猫を指して言った。
「じゃお先。」
「はい。ありがとうございます。」
都会猫が入れ替わるようにやって来た。
「待たせちゃって、ごめんね。
さ、行こうか。」
「行くって?」
「ここにいるわけにも、いかないだろ。俺の家は、部屋が余ってるから、
そこにとりあえずね。」
「すみません…。
僕、なにもできなくて。」
「僕って、言うようになったんだね。」
「…「ジブン」って言わないと(家では)怒られたから。」
「よくわからないけど、
逃げてくるくらい大変だったんだろ。
ま、ここでもダメなことしたら怒るけどな。」
「わかってます。」
少し苦笑いされた気がする。
彼は手を引いて
僕を高そうな車に乗せた。



