田舎猫と都会猫、のはなし。


「儀式…?」
「そうよ。綺麗にして、みんなにお披露目するの。あなたが大人になるのを。」

マダムは、僕の手を取った。
僕は、後ろで控えている都会猫に目線を送ると、彼は静かに目を閉じて、数秒してから見つめかえした。
まるで心配しないで、というように。

数人の黒服がやってきて、
家来のように、僕を施してくれる。
マダムはその様子を椅子に座ってじっとみているのだ。傍らには、あのバーテンダーさんが立っている。

僕はシャワーを浴び
香料のある液体を全身に浴びたり、クリームを塗られたりした。
毛並みはサラサラに、爪はピカピカに。
層のある薄いレース状のドレスを着せられ、マントも身に付けて、
どこかの王女のようにも思えた。

「これが僕…。」
「そうよ。」
「信じられない…。」

これが小汚かったみすぼらしい、
捨て猫のようだった僕だろうか?
鏡の向こうには、
どこかの姫?が、映っている。

「これがアナタなのよ。素敵でしょ?
さぁ、みんなのところに行きましょ。」

マダムに手を引かれ
赤い廊下を進み
ステージと思われる裏の
大きいカーテンへと進んだ。