「それより、これを渡さなきゃな。」
テーブルの上に置かれた封筒。
「これは…?」
「ほら、これが君のお給料だ。
好きなものでも、買うといい。」
僕は封筒をとり、中身を見た。
「えっ、こんなに…。」
「ちゃんと働いていただろ。好きに使いな。」
思わず僕の目からポロポロこぼれた。
「僕、はじめてだよ。自分で働いたのが、お金になるなんて。
それに叩かれたり怒られない。
きれいなお風呂にも毎日入れるし、
美味しい御飯も食べられる。
こんな毎日が、王様みたいな暮らしは、したことないし、夢みたいだよ。
ありがとう、本当にありがとう。」
毎日毎日、
家族や兄弟姉妹達の家事に追われ、
自分のことを、することさえ
できなかった。
いつも汚れてバカにされていた。
自分のお金…。
したいことが自由にできる…。
それになにより、そばに
あなたがいるから。
「ダメだよ、もっと自分を大事にしなきゃ。」
僕は泣いたあと
彼の胸に顔を埋めていたらしい。
彼は優しく頭を撫でてくれている。
いつも優しい。いつも。
夢中で彼にしがみついていた。
すこし落ち着いたあと僕は
彼に言った。
「したいこと言っていい?」
「もちろんだ。」
「あなたと…デートしたいんだ。」



