田舎猫と都会猫、のはなし。


ぎゅっと、抱き締めてくれてる。

「…嬉しい。
きょうは帰ってきてくれるんだよね?
僕は、すごく寂しかったんだ。」

「…甘えん坊だな。仕事が終わったら一緒に帰ろうな。」
「うん。」

嬉しい、よかった。
戻ってきてくれるんだ…。
僕のもとに。

ふとみると、彼の首もとが赤くなっている。

「どうしたの?これ。怪我でもしたの?」

彼は身体をバッと離すと、
傷を隠すように襟を直した。

「ちょっと、かすっただけさ。じゃ、またな。」と軽く手を振って、
階段を登っていった。

なんだろう、僕、
悪いことでも言ったかな。
後で、謝ろう…。

僕はメモに書かれた品物を
探していた。

身体に彼の感触と香りが残っている。
期待して…いいんだよね。