「まって。」 僕はとっさに、彼の服をつかんだ。 「離してくれ。」 「いやだ、離さない。僕をひとりにしないで。僕はあなたがいないと生きていけない。」 「…。そんなこと言うなよ。」 「だって、本当のことだもん。」 「困ったな…。」 彼は僕の頭を数回撫でると 持っているカードキーを手渡した。 「部屋は自由に使っていい。使い方はもう、わかるだろ。仕事場までの迎えは別の奴に頼んでおくよ。」 掴んだ手を振りほどいて、彼は行ってしまった。 (あの純粋な目を見ると俺は…。)