凍りついた愛

「やめて、触らないで・・・・・・」

 両手で彼を押し返しても、彼は首を横に振った。

「そんなこと言わないで」
 
 離れようとしても、さっきより抱きしめる力が強くなった。

 こんな自分、抱きしめられる資格なんてない。

 自分のしたことに後悔しても、もうすでに遅かった。


 重い気持ちを引きずったまま旅行は終わり、仕事の日々に戻った。

 仕事が終わって休憩室へ向かっているとき、スマートフォンの着信音が鳴った。
 かけてきたのは同じ職場で働く先輩社員。

「お疲れ様です。どうなさいましたか?」

『今すぐネット開いて!』

「はい?」

 すぐにインターネットを開くよう言われたものの、休憩室にパソコンはない。

 休憩室にいることを伝えると、テレビをつけるよう言われた。

 何が何だかわからず電源ボタンを押すと、ニュースが流れていた。

 二十代前半の女性の遺体がホテルのバスルームで発見された。

「・・・・・・この場所」

 そのホテルはなずなが連休中に泊まっていたホテルだ。

 彼女の名前は天霧紫苑(あまぎりしおん)。

 ホテルで出会った彼が名乗った名前。

「・・・・・・どういうこと?」

 テレビに映っている彼女が天霧紫苑なら、彼はいったい誰なのか。

 涙はもう出てこない。

 言葉を発することができない自分の名前を電話越しに呼ぶ声だけが響いていた。