私の実家には新婚のお母さんと竜也さんの二人で住んでもらい、私は郁人のお父さんが経営する賃貸マンションへと引越した。

まだ高校生だから私の一人暮らしを渋っていたお母さんだったけど、郁人が側にいてくれるという条件でお母さんと竜也さんが承諾してくれたの。

引っ越してからは私が寂しくならないように郁人と海人くんは毎日のように私の部屋へ遊びに来てくれた。

遊び疲れた海人くんがそのまま私の部屋で寝てしまうこともあって。

そんな時は郁人も一緒に私の部屋に泊ってくれた。

自宅に居た時、毎晩一人ぼっちだったことを考えると今のこの生活はとても賑やかで、私が誰かから必要とされていると感じられるから引越して本当に良かったと思っている。

そして冬が来て、郁人は大学に合格し、私は高校卒業後の就職先が決まった。

OLって言う響きに憧れて、会社の事務の仕事を選んだ。

就職先が決まる前に、郁人のお父さんから

「帆乃香さんは卒業したらうちの会社で事務をやってみるつもりは無いかな?」

と、誘ってもらって嬉しかったけど、郁人がそれを反対したからお父さんのお誘いはお断りした。

郁人は私が自分のお母さんみたいになってしまうんじゃないか、って私のことを心配していて。

自分の気に入った会社に就職した方がいいよって。

郁人が合格したのはこのマンションから通える大学で、私たちは新しい生活に慣れてきたら郁人と一緒に生活する約束をした。

一緒に暮らすために高校卒業前の自由登校になると私は花嫁修業をスタートさせた。

花嫁修業をしてくれているのは郁人のおばさんの香織さんで、島田家の味を教えてもらっている。

香織さんのサポートもあって、郁人と海人くんの夕食は私が作るようになっていった。