3人で花火を見る場所を探していると人の波が途切れた場所があって、そこに持ってきたレジャーシートを敷いて座った。
「ここ穴場じゃない? 屋台からは少し離れたけど花火も良く見えそうだし、人も少ないしね」
さっきの出来事が無かったかのように私が明るく話していたら、
「帆乃香、ごめん! 本当にごめんなさい!」
急に郁人が正座して私に謝ってきた。
「どっ、どうしたの、郁人」
「さっきの絡んできたあいつら。俺のせいだろ? 怖い思いをさせて、本当にごめんね」
「ううん、いいよ。大丈夫。海人くんに守ってもらったよ。海人くん強かったよ。ね、海人くん」
「うん、僕ね、押されたけど倒れなかったよ。でももっと強くなるよ。いつか郁人に勝つんだ」
「おう、海人が強くなるの楽しみだな。稽古頑張れよ」
「郁人、さっきの人は誰なのかなぁ?」
私が意地悪に郁人に質問した。
「帆乃香ぁ・・・俺さ、自分がイヤになる。あの女、誰だか分かっただろ? 俺、最低な奴と付き合ってたんだなって。自己嫌悪だよ」
「郁人って、女の人を見る目ないよね。なんなら、やきもちも妬かないわ。でもこんなこと言うと郁人が選んだ私もダメな人ってことになっちゃうの?」
「帆乃香は違うだろ! 絶対に違う。最高にいい女だよ、帆乃香は」
「ばっ、ばか! 恥ずかし気もなく良くそんなこと言えるね」
「だって本当のことだろ。帆乃香以上のいい女なんていないよな、海人」
「うん。帆乃香は最高だよ!」
うわ、海人くんにまで最高って言ってもらっちゃった。
「海人くん、ありがとーーー。私、嬉しいよぉ」
私は海人くんをギュッと抱きしめて、何度もありがとうって言った。
「なぁ、帆乃香。俺には? 俺にはハグしてくれないの? ねぇ」
あははっ、やっぱり郁人が拗ねた。
「ダメ、今日は海人くんだけだよ。郁人にはハグしてあげない」
「なんだよ帆乃香。じゃいいよ。俺から行くから。海人、どけ!」
郁人は真ん中に座っていた海人くんをどかして、私に覆い被さってきた。
「きゃー! 郁人、やめてー。くっ、苦しいよ。重いって! ギブ!ギブ!」
郁人とじゃれ合っていたら、花火が打ちあがった。
「ちょっと、郁人! 花火が見れないでしょ。どいてってば」
「海人、いいか、花火から絶対に目を離すなよ。花火を良く見てろよ」
郁人が海人くんにそう言うと、私に覆い被さったままの郁人は海人くんがこっちを見ていないことを確認して、チュッと唇にキスをしてきた。
「いっ! 郁人!」
「帆乃香、可愛い。俺、帆乃香が好き。大好き」
さっきまで喧嘩をしていた人とは思えないような変わりよう。
そんな郁人のこと、私も大好きだよ。
それから3人で並んで見た花火はとても綺麗で、何年経っても忘れることのない大切な思い出になった。



