抱きしめられている私の背中が熱い。

郁人からの熱が背中に伝わってくる。

そして私の肩に乗せている郁人の顔が、声が、近くて。

私の早すぎる鼓動が郁人に伝わってしまうんじゃないかって。

ドキドキして。

「帆乃香の良いところはたくさんあるよ。帆乃香は俺なんかよりずっとずっと優しい。ちゃんと他人のことを考えてあげられる。責任感も強いだろ。俺、帆乃香のことずっと見てきたんだから、もっと言えるよ」

「恥ずかしくなるから、私のことはもう言わないで。私も、もうあんなこと言わないから。不安にさせちゃってごめんね」

「か弱いのに芯は強くて。怖いくせに強がって。そんなの、俺が守ってあげなきゃって思うだろ。こんなにかわいい帆乃香が俺の隣にいてくれるんだぞ。それだけで俺は幸せなんだけど」

「郁人。恥ずかしいってば。もう私の心臓持たないから」

「帆乃香・・・。」

郁人は私の名前を囁くと私の体から離れて、私の正面に立った。

「帆乃香、これからもずっと俺の隣にいて」

そう言いながら郁人の両手が私の頬を優しく包み、私の顔を少し上に向けさせる。


そして私たちは初めてのキスをした。


郁人は角度を変えて何度もキスをしてくる。

「郁人、もう限界。恥ずかしいって」

「俺の胸、触ってみ。帆乃香だけじゃない。俺の心臓だってこんなにドキドキしてるんだからな」

郁人は私の手を取り、郁人の心臓の上に私の手を当てた。

「本当だ。郁人の心臓もドキドキしてる。私と同じなんだね。なんか嬉しい」

それまでは凄く緊張していたけれど、郁人も私と同じなんだって。

私に対して郁人も緊張してくれているんだって知れて、郁人のことがとても愛おしく感じた。

「郁人って、本当に私に甘いね。こんなにたくさん好きを貰ったことないよ」

「そっか? まだ半分も好きをあげてないけどな」

そうだ。花火大会の話をするなら、今かも。

こんなに私に甘い郁人だよ? きっと私から誘っても大丈夫だよね。

一緒に行ってくれるかな。

私は思い切って郁人を誘ってみようと思った。

「あの、ね。明後日ね。花火大会があるの知ってる?」

「あー、うん。知ってるけど。それがどうしたの?」

「その日、郁人は何してるかなって思って」

「特に何も予定はないよ」

どうしてここまで私が話しているのに察してくれないの、郁人!