郁人に近付こうとしたのに、私を囲んでいる子たちがそれを阻止した。
「島田さ、昨日は上野さんと帰らなかったの?」
「あ? 昨日は委員会だったから一緒じゃなかったけど。それがなんだよ」
「上野さん、昨日は南高の男とデートしてたってよ。島田はそれ知ってるの?」
やめて! そんなことしてない。
「違う! 変なこと言わないで」
反撃してみたけど、そんなの女の子たちは聞いていなくて。
「違わないよねー。島田に見られないようにわざわざ遠くの駅で待ち合わせしてたって聞いたよ」
「お前ら、適当なこと言ってんなよ。上野さんが違うって言ってんだから、違うんだろ」
「島田はどれだけこの子に騙されてるのよ。じゃ、南高の男との関係を本人に聞いてみなよ」
「南高・・・・。」
郁人が南高と聞いて考え込んでいる。
「上野さん、南高の男って。まさか違うだろ? 大丈夫だったのか?」
郁人が驚いて私に質問をしてくるけど、その返事は皆の前ではできないよ、郁人。
私が返事できずにいると、郁人がイライラして。
「なぁ、帆乃香! 何も無かったんだよな?」
「ねー、やっぱり島田と上野さんって何かあるよね? もう帆乃香って呼んでるじゃない。それで隠しているつもりなの?」
「お前らは少し黙ってて。帆乃香、ちょっと来て」
郁人は私の所まで来ると、私の手を握り教室から私を連れ出した。