「島田くん、どうしてそれを知ってるの? えっ? なんで?」

「俺、あの公園の近くでバイトっぽいことしてて。帆乃香がいつも公園にいるのを知ってたんだ」

「あぁ、そうだったの。それで、か。じゃ今日もこれからバイトなんだ?」

「ああ。バイトっつーか。まあバイトになるのか? で、帆乃香は今日もこれから公園に行くの? 家には帰らないのか?」

「前にあの公園で少し怖い思いをしたからあまり行きたくないんだよね。でもどこかで時間を潰さなきゃ」

「じゃ、俺が一緒に居てやるよ。公園に行くか」

「でも島田くんはこれからバイトでしょ? 私は大丈夫だよ。ありがとう」

「ちょっと待ってて」

島田くんはそう言うと誰かに電話した。

「あ、香織さん? 俺。今日そっち行けねーわ。悪いな」

香織さんって人と約束があった? この駅で降りた理由はバイトだったからじゃないのかな。

「島田くん、香織さんって彼女さん? 私なら本当に大丈夫だから。彼女さんに会いに行ってあげて」

「いつ香織さんが俺の彼女になったんだよ? 全くの見当違いだから。さ、公園行くぞ」

島田くんは公園に向かって歩き出す。

けれど、私の足が動かない。あの公園は怖い。

またあの3人組がいたらって思うと、行きたくない。

「何してんの? おいで」

島田くんが私を手招きして、私に合わせてゆっくり歩いてくれる。

「島田くん、どうしてそんなに優しくしてくれるの?」

そう質問した私の顔を島田くんが覗き込み、

「帆乃香の方が優しいでしょ。俺は別に優しくないよ」

「私、島田くんに優しくしたことなんてないよ」

「ははっ、俺に対してじゃなくてもさ。みんなに優しいだろ」

それから島田くんは言葉を続ける。

「でもね、帆乃香。その優しい性格を逆手に取られて人に騙されたり裏切られたりするなよ。それと、情に流されるな。ちゃんと相手の本質を見抜けるようにならないと、そのうち痛い目に合うからな」

「えっと。島田くんは一体、何について話しているの? ごめんね、良く分からない」

「そっか。とにかく上辺だけで判断するなよ。あの蒼汰ってやつもそうだから。簡単に信じるな」

蒼汰くん? 蒼汰くんに対して悪い印象はないんだけどな。

公園まで来て、そこに高校生くらいの男の人が一人も居なかったことにホッとして、私たちは公園のベンチに座った。

「島田くん、本当に私は大丈夫だから。暗くなる前に帰るし」

「ん。もう少し居るよ。帆乃香に会いたがってるヤツがもうすぐ来るはずだし」

「誰? えっ? もしかして・・・。島田くんってあの時の3人組じゃないよね?」

私は思わずベンチから勢いよく立ち上がり、島田くんのことが急に怖くなって島田くんから距離を取った。