授業開始5分前の予鈴が鳴った時、帆乃香が走ってきた。
俺は下駄箱の陰に隠れてそっと帆乃香を見る。
あの南高の男と付き合うことにしたのか?
あれ? なんだ俺のこの残念な感じ。意味分かんねぇ。
気付くと帆乃香が自分のクラスを見つけられずに涙目になっていた。
おい、そこは2年生のクラス表だって。
こいつ、意外と抜けているのか?
もう見ているのが可哀想になって思わず声を掛けてしまった。
「ねぇ、そこ2年のクラス表だけど?」
ああ、クラスが見つけられなかっただけでマジで泣くってやめてくれよ。
「上野帆乃香は3組だよ。早く行くぞ」
俺は帆乃香の手を取り、教室まで走った。
始業式の間も、ホームルームの間も、帆乃香に告白してきた南高のヤツが気になって、ずっとそればかりを考えていた。
あの3人組の、最初に逃げた2人の顔を俺は良く見ていない。
そのどちらかの男ってことは、無いよな?
俺の思い過ごしならいいんだけど。
もし、俺の悪い予感が当たっていたら、帆乃香を守るしかないだろ。
帆乃香に何かあったら海人が悲しむし、俺だって助けた手前何かあってもらっては困る。
俺は学校帰りに帆乃香をしばらくの間、送っていくと決めた。
どうして帆乃香を送ると決めた?
一緒に帰りたいと思ったんじゃない。海人と帆乃香を守るためだ。
自分の中での自問自答。
一緒に帰りたいって、なんだよ。
自分の気持ちが良く分からなかった。