占い師「あなたには才能があるわ、大きな夢があるのでしょう?」

私「は?」

それはマンションの一室。
怪しいマダムが目の前に。

(自信を持たせてくれようとしてるのは理解したけど、アドバイスを素直に受け取れない…)

占い師「あなたのしたいことを
そのノートに描くのです。
なるべく具体的にね。
写真を貼るのでもよいですよ。」

一冊の夢ノートを渡された。
ユメノート?夢を書く、ノート。
私「はぁ…」

帰り道の商店街通りを歩く。
「どうしても、何かする気になれないんだよね」

ウインドウショッピングしながら
思い出してみる。
「あんな風に綺麗だったらまだ何かできそうな気もするけど」
窓に張り付いて手形がつくくらい。

店員さん「何かお探しですか?」
「いえ!」と後ろを振り向き去るし。
恥ずかしい…恥ずかしい…😭

人と接するのも苦手だし
それでも勇気を出して外に出て
占ってもらったのに。

この性格だからバイトを転々としたり倉庫とか裏方ばかりだし。
接客なんかダメダメ。
家に帰れば、弟と妹のご飯もあるし
それでもこの不況で仕事も失くなって
どうするか路頭に迷う寸前で。
どうしようもなくて
(まだ少しは貯金あるけどさ)

すがる思いで
web占いの応募に当たって
人気占い師マダムノリコに
占ってもらったのに…

人気SNSのフォローで
占い師さんのサイト知って
ずっとみてたけど
まさか選ばれるなんて
ラッキーが来るとは
夢にも(ここで運を使い果たしてる気が)

わたしは挫折した。
書くことを
生業としたかったはずなのに
ことごとく夢は破れ
人も信用できず
表現することさえやめてしまった。
生活の困窮さと余裕のない日々。
いわゆる心のないロボット。
言われた仕事だけする。
中身は空っぽ。
私にはそれがお似合い。
うぬぼれてしまうから。
望んではダメ。それでいい。

好きな人に対しても
足の裏に書くようなタイプ、木の影から見守るタイプ…それだけでシアワセ…
もてなされるより眺めたい。
そう私は小市民…一介の小市民…
つつましくシアワセにと願うばかり。

夢ノートか…
どうせ私に大きいことは
到底無理だし、
夢は実現しないのだから
ストレス発散に好き勝手なこと書くのもいいのかもしれない。

と、急にポジティブに

お気に入りの喫茶店にはいり
アイスティーを頼む。
オレンジのフレーバーティー。

妄想は膨らむ。テンション高め。
好きな温泉とー
好きな紅茶とー
愛するねこちゃんとー
森の中の豪邸の
素敵なお部屋に…美しい二人…(腐)
美しい…尊い…
うふふ…( *´艸`)

写真でもいいっていってたな…
好きなアイドルの写真でも
貼っちゃお♪
超絶美形で頭もよく
とってもお金持ちの御曹司♡
双子の王子なんて最高。

そんな人が執事というか
何でも言うこと聞いてくれたりして…
(しかも腐っている…)
欲望はつきない。

バカなことばっかり書いてないで
新しい仕事探さなきゃ…
と現実に戻ったところで…
お会計…

「きゃっ」
突然の液体。頭からの液体。
紅茶?紅茶だよね?なに?
アイスだからまだよかったけど
うわぁ服びしょびしょ
どないしょ…落としたノートまで…

拾う→見上げる→素敵な人が

「大丈夫?」
双子の王子!?えっ嘘っ!?
王子なの!?ほんもの!?

どうやら撮影中だったみたい…
ノート書くのに夢中で周り全然
気づかなかった…😭

急に立ち上がったから
ぶつかってドリンクをかぶってしまった、向こうも濡れてしまったかも…
高そうなお召し物が…
ぎゃー\(>_<)/
べ、弁償どないしよ…


「ごめんなさいごめんなさい
ほんとーに、ごめんなさい」

でも目の前にイケメンが二人…
濡れてるのに…
ヤバい…
細…
同じ人間とは思えない…
綺麗…
卒倒する…
ありがたやありがたや…
後光がみえる…

「いけないのは僕たちだよ、怪我はなかった?」
「は、はい大丈夫です。」
「時間はある?なら、そちらで着替えるといいよ。着替え好きなの選んでいいから。」
「えっ」
「いいからいいから」
手を引かれてくると
撮影用なのか店頭に
大きな黒いワゴン車が止められていて
高そうなエンブレムが…
これ財閥のお車なのでは…
「僕たちの移動用の車なんだ、着替えは好きなのあげるから、この中にあるのを着ていいよ」
「えっいえ、洗って返しますから」
「いいって遠慮なくね」
笑顔が眩しすぎるぜ…クラッ
立ちくらみするわ

「それとも着替えを手伝おうか?☺️」ニヤリ
「…」言葉もでない

「あっそうだ、お会計!」
「大丈夫、済ませておいたから」
「…ごめんなさい😭」
「そんなに謝らないで、こちらこそ驚かせてごめんね😀」
なでなで。優しすぎて泣く。

「そうだ今度、僕らの誕生日パーティーがあるんだ。連絡先と招待状を渡しておくから絶対来てね。」

握手。奇跡。あたたかい、ほんもの…

(そんなことがあっていいのか…)

かわいい弟「ユウヤ」と
メガネの兄「トモヤ」。
顔はそっくりなのに…
イケメン…両手に花。

はぁ…(*゚∀゚)=3 興奮した。
帰って妹弟のご飯作らなきゃ…
って


あれ?
ユメノートなくしちゃった?
着替えたときかな
どうしよう…

「あなたが探してるのはこれかしら?」
右手でつまむように見せびらかす。
金髪ロングの目がきつそうな女…
「ずいぶん勝手なこと書いてくれちゃって」
「中身を読んだの!?」
「そりゃ落ちてたら読むわよ、それより、私の「婚約者」たちを、よくも、こんなもので一人占めしてくれたわね」
「!?なんのこと!?」

「このノートには[魔力]がかけられているわ。おおよそ誰からなのかは検討ついてるけど」

「魔力?」
「そうよ、知らないとは言わせないわよ。」

あの占い師、魔女だったの?

「よくわかりませんけど、返してもらえませんか?」
「いやよ。でも条件を飲んだら返してもいいかしら」

「条件てなに?」

「森のお屋敷(フォレストガーデン)で舞踏会があるの。彼らのお誕生日会として。
彼らが18歳になったので、お祖父様が持っている財産を正式に引き継がれるのよ。」
「ご両親を事故で幼少時に亡くされて。引退されるはずのお祖父様が一時的に引き受けていたの。
私はコンツェルンの娘、ひきうけた後に
彼方のどちらかと結婚する予定だったのよ。それをあなたが来たお陰でどちらとも破談に…怒」
「そしてその秘密の舞踏会、私も行くわ、お妃選びよ。兄弟と私が結婚の約束をする、それが条件。」

ここ現代ですよね?異世界じゃありませんよね?

「ノートに私の未来を書くのよ。あなたとは別れて、私が彼らと結婚するって。
ノートの所有者でなければ書けないし、書いてあることが成就されるまで、燃やすことも捨てることも、できないのよ。あぁ忌々しい。

あなたは兄弟のどちらが好きなの?
選ばせてあげるわ」

「彼らはモノじゃないわ
選ぶ権利があるし、
それに貴女は彼らが好きというより、
彼らの立場や財産が好きなんじゃないの?
思いやりが感じられないもの
自分が一番好きなのよ」

(でもそれは私も同じかもしれない
自分のことばかり考えてた…)

「そうよ。私は家を救うために結婚するの、それは子どものころから決まっていたもの。

私が本当に好きなのは…あなた…」

「ええっ?」

「本当のこと言うと男の人に
興味ないし…あなた素敵だし」
「!!!」
「言うこと聞いてくれたら」

あっちょっとやめ…

「じゃあ、
ノートにあなたを消すと書いたら」

「消えるでしょうね、なんでもできちゃうわ。そんなことさせないけど。恐ろしいノートだわ、なぜ魔女は貴女にそれを渡したのかしらね。よく考えたら…
私がなぜ知ってるかって?
私も、あのノートを過去に渡された一人だからよ。お陰で大金持ちの令嬢になれたわ。年もとらずに…また彼らも同じ…

森のお屋敷で二人は過ごしてる
あなたの願いは成就しているわ…
永遠に私たちと暮らすのよ」

「だからこんなもの…捨てて私と…シアワセに暮らしましょ…」
ノートをゴミ箱に捨て
二人はベッドになだれ込む…

「あぁ助けて…」



「…っとそういうのが書きたい訳じゃない気がしてきた。」
「先生、原稿いかがでしょう…」
「まだもうちょっと…」
「ダメですよ、もうこれ貰っていきますからね」
「あっダメ…」

車は無情にも走り去っていった。