こっちだって辞退したいわ!
で、さっさと人間界に帰して欲しい!
でもアンタら兄弟と〝良好な関係を築く〟ことが人間界に帰してもらえる条件なんだよう!チクショウ!
「いいえ。知らないことを学べる環境は貴重です。慣れないこともあり大変な部分ももちろんありますがその分やり甲斐もあります」
必殺、社会人社交辞令。
今にも口から出てきそうな本音を一切感じさせないよう、私はふわりとヘンリー笑い、思ってもいないことをペラペラと喋る。
ああ、社会人でよかった。学生の多感な私なら迷わず本音を言ってヘンリーに殴りかかりかねない。
「…そうか。それでは仕方ないな」
私の言葉を聞いてヘンリーはわざとらしく残念そうな表情を浮かべた。
「これが何かわかるか?咲良」
「…っ!私のスマホ…何で…」
笑顔のヘンリーが私に見せつけたもの、それは私のスマホだった。
あり得ない場所にある私のスマホに私は驚いて目を見開く。
スマホは一番大切な必需品なので肌身離さずずっと持っていたものだ。
今も本来なら私の制服のポケットに入っているはずなのに。



