「…ギャレット、バッカス」
私は気がつけばその場に止まっていた。
「…声が聞こえるの。テオが帰って来なければみんなを殺すって。どうしたら…」
震える声で私は2人に問いかける。
今どの選択をするのが最善なのか状況を理解しないまま逃げ続けている私にはわからなかった。
「構わない。そのまま逃げ続ければいい。もうすぐで咲良は帰れる」
私の問いかけに答えたのはバッカスだった。
無表情でバッカスが優しく私を見つめる。
どうしてだろうか。
すごく嫌な予感がする。
「…ねぇ、もしかしてだけどみんな自分の命を犠牲して…とかおかしなこと考えていないよね?」
それはきっとあり得ない。
彼らは魔界を滅ぼすと言われたほど己の欲望に忠実で自由な悪魔だ。
そんな彼らが誰かの為に命を張るなんて。
あり得ないはずなのに。
「「…」」
ギャレットとバッカスは私に答えることなく曖昧な笑顔を浮かべた。



