私だってまだ帰りたくない。
あと少しだけ、彼らと居たいと思ってテオに嘘を付いたのだから。
「…テオ、聞いて」
私は私のすぐ側にいるテオをまっすぐ見つめた。
「ちゃんとヘンリーたちに命令はするよ。だけどもう少しだけヘンリーたちと一緒にいたい。私はヘンリーたちとまだ居たくてテオに嘘をついてたの。だから…」
テオは優しい。
魔王としてはちっとも優しくないけどミアとしてならここにいる誰よりも私に優しかった。
だからきっと私の願いもいつものように叶えてくれると信じて疑わなかった。
「…ダメだよ」
テオは暗い表情で私の言葉を否定した。
「咲良には僕だけでしょ?魔界に来てからずっと咲良が頼れるのも、安堵できるのも、僕だけだったはずだよ?それなのに何?ヘンリーたちと一緒に居たい?だから嘘をついた?」
「…」
「ダメだよ。咲良は僕だけしかいらないんだよ。なのになのになのに!」
テオの勢いに何も言えずにいるとテオの口調は静かなものから荒いものへと変わり始める。



