ギャレットの牙につけられた傷によって指から少量の血が流れ出る。
その血を吸うようにギャレットは自身の唇を私の指に押し当てた。
指にキスしているようにしか見えない。
ギャレット本人はキスのつもりは一切ないだろう。
しかし私には王子様がお姫様の手にキスをする、そんなロマンチックな光景にしか見えなかった。
…でも指は普通に痛い。
「これで俺は咲良の契約悪魔だよ。…必ずミアちゃんのサイン付きチェキを持って帰って来いよ」
私に先程までまるで王子様のように手にキスを落としていたギャレットはどこへ行ってしまったのか。
私の手から唇を離すとギャレットは一切笑いもせず、むしろ私を睨んで圧をかけてきた。
まあ、契約できたし、このくらいいいか。



