それなのに突然降って湧いて来た結婚話、しかも相手は父の会社の借金を払ってくれる条件に、私と結婚させて欲しいなんて。

父にしてみれば、戸倉さんは神様みたいな存在だろう。

借金払ってくれて、売れ残ったアラフォー娘を貰ってくれるのだから。

でも私にしてみれば、十五歳も年下の御曹司との結婚、幸せになれる気がしない、戸倉さんは何を企んでいるのか、勘ぐりたくなるのが当たり前だ。

ドアをノックした。

「入りなさい」

と父の声がした。

「失礼します」

ドアを開けて部屋に入ると、戸倉さんと思われる男性と目が合った。

その男性は私の姿を確認すると、いきなり立ち上がりツカツカと私の目の前に歩み寄った。

じっと見つめ合い、その男性は私にこう言った。

「美鈴さん、自分と結婚してください」

そして私の手を握り手の甲にキスをした。

一瞬時が止まったかのような錯覚を覚えた。

はじめて会った男性にプロポーズされて、戸惑いを隠せなかった。

私は慌てて手を引っ込めた。