「美鈴が働いている会社は、すげえ大手の銀行か」

俺は客になりすまし、美鈴の働いている銀行に向かった。

「窓口業務との事だが、あっ、いた、美鈴だ、信じられない、あの時のままだ」

俺は二十年前にタイムスリップしたのかと思った。

全く歳を感じられなかった。

番号が呼ばれ、美鈴の目の前に立った。

「今日はどの様なご用件でしょうか」

「あっ、えっと、口座開設をお願いしたいんですが」

「かしこまりました、それでは担当窓口から改めましてお声掛けさせて頂きますので、お掛けになってお待ちください」

「はい」

二十年経っても、やはり美鈴の笑顔は健在だった。

しかし、この時俺は二十年前とは違う笑顔に気づくことが出来なかった。




俺は美鈴の父親の借金を払い、下請け会社の契約を交わした。

「本当にありがとうございます、なんてお礼を言ったらいいか」

「いいえ、あのう、美鈴さんとお話ししたいんですが呼んで頂けますか」

「はい」

美鈴の父親は早速美鈴を呼んでくれた。