『仁は?この件については、何か言ってた?』
『和佳菜さんは、知りたいと思った時に聞くだろうから、特に気にしなくていいと』
さすが、仁。
といったところだろうか。
あたしのこと、本当によくわかっているのね。
「あたし、みんなに気を遣わせていたのね」
ぽつりとつぶやいた独り言は、この部屋であたしがひとりであることを教えてくれた。
確かに、あたしは、裏切り者であることを断罪したけど、綾は戻ってきてくれた。
断罪した身であるあたしには、相当辛いのではないかと憶測が立つのも分からないでもない。
「あたしはどちらかといえば、綾が戻ってきてくれたことの方が嬉しかったのだけど…」
ああ、だめだ。
あたしがこんな気持ちになっているのは、よくないことね。
ふるふると、頭をふっても、思考は上手く切り替えられないけれども。
「まずは、行動してみなくては」
右手には、陽太からもらった住所が書いてある紙が握られている。
『綾さんのことは、俺らも心配なんすよ。メッセージは貰いますけど、会ってはないので』
陽太の声が反芻する。
『どうか、俺らの大切な人を戻してくれませんか?』
ああ、これは。
あたしが動く時が来たみたいね。



