レターセットを手元に帰ってきたら、どうやらあたしの愛しい人は一度帰ってきたらしい。
「“次は会いたい”…ですって。なんでしょうね、遠距離恋愛でもしてるのかしら?」
ふと、洩らした独り言は喧騒の中に消えていく。
陽が落ちた倉庫は今日も騒がしい。
帰る場所がない彼らは、よくこの場所でねとまりをしているらしい。
「和佳菜さんも、今日はココっすか?」
下っ端の1人が声をかけてくれる。
普段はママの残したマンションに帰るけど、仁を待つ日はここに残ることもある。
「どうしようかしら」
マンションに帰ったとて、ママはいない。
3日前から、パリのファッションショーに向けて飛び立ってしまった。
今度は2ヶ月帰ってこないらしい。
全く、奔放なところは変わらないわね。
ただ、ママはあたしの周りの騒がしい一件が一段落ついたことに安心しているらしく、学校に通ってくれればそれでいいと言ってくれた。
ママが願った“あたしが普通の生活を送る”ということが叶っている今、仁のことについてとやかく言うつもりはないらしい。
仁は仁で、忙しくしているし、置き手紙を書いたあたり今日も戻らないんだろう。
別に戻ってもいいのだろうけど…。
「あたしも今日はここで寝るわね」
ママと2人で住むマンションで、ひとりきりはあまりに寂しい。
今日ここに帰ってこないとしても、愛しい貴方の帰りをぼんやりと待つことを決めた。
…聞きたいこともあるしね。



