「和佳菜?」
ああ、あたしは今どこにいたのだろう。
「どうしたの、元気ないよね?」
あたしは見つめる影はモノクロのように見える。
いや、影は確かに黒いのだけれども。
「…なんでもないわ。翔」
「久しぶりにここに来たっていうのに、ぼーっとしてるなんて、和佳菜らしくないね」
「なによ、あたしらしいって」
「だって、和佳菜はいつもキリッとしていて、カッコよくて、スパスパ動くじゃない?」
「なんで擬音だらけなのよ。あたしだって、ぼんやりくらいするわよ」
「えーそうかなあ」
翔が倉庫に来るのは本当に久しぶりだ。
あのことがあってから、今も倉庫に訪れる風景は何一つ変わらないというのに、翔は旅に出ると言い残して、いつやの誰かさんみたく、いなくなってしまった。
誰かさんの場合は仁に迷惑をかけないようにという、至極真っ当な理由だったけれども、翔の場合はまた違って、単なる放浪の日々を楽しみたいだけなようだった。
「そういう翔は、どうせまた違う国に行くのでしょう?あたし、この会話を繰り返したいわけじゃないわ」
「ピンポーン!次は、シンガポールに行こうと思って」
「あらまた、お金持ちの国に行くのね。いいんじゃない?時差が少ないから、楽しめそうね?」
「そーなの、この前行ったNYは時差がひどくて、全然時差ボケ治んなかったよ」
「12時間以上違うもの、当たり前じゃない」
「まーた冷たいこと言う!はい、お土産」
目の前に差し出されるお土産にはいつも期待できない。
「ありがとう。…うん、それでこれは?」
「NYの桜の花びら」
この人の持ってくる土産のセンスはいつだって、壊滅的であるからだ。



