「世間にとっては、どんな些細なことでも、
 僕にとっては結菜ちゃんがしてくれることなら最高に可愛く感じる」


 必死に平静を装う。
 そのことに専念している。


 それなのに。
 一輝くんは次から次へと恥ずかしくなるような言葉を注いでくる。

 そのたびに。
 いられなくなりそうになる。
 平静で。


「なんか恥ずかしいよ、一輝くん」


「恥ずかしがる結菜ちゃんも
 すごく可愛い」


 きてしまったかもしれない、限界が。
 恥ずかしいという気持ちの。

 それだから。
 思わず顔をうずめてしまった。
 一輝くんの胸の中に。


「結菜ちゃんは可愛いね
 何をしても」


 一輝くんはそう言うと。
 私のことをぎゅっと抱きしめた。


 恥ずかしさ。
 抱きしめられている。
 それらのドキドキが混ぜこぜになっている。


「結菜ちゃん」


「なぁに、一輝くん」


 恥ずかしさ。
 それが影響し。
 小さくなってしまった、声が。


「したい、もう一度」


「え?」


 したい、とは?


「夜にしたこと」


『夜にしたこと』
 それって、もしかしてっ‼



 驚きと焦り。
 それらで忙しくなってしまっている。
 頭と心の中が。


 そんな私とは正反対に。
 一輝くんは結構余裕そう。

 あんなにも大胆なことを言っている。
 それなのに、なんで一輝くんはそんなにも余裕なのっ⁉





 私と一輝くん。
 二人の余裕の差。
 その違いに戸惑いを感じている。
 そんなとき。

 一輝くんは私から離れた。
 やさしく少しだけ。